ソリ付き歩行器治験研究会
オブザーバーご挨拶

新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)
医療福祉機器センター
尾沢潤一

 健常者にとりその生きている状態と全く反対の状態はなかなか想像できません。暇なときにのんびりと寝ていられるというのであれば「寝たきり」というのは、多忙を極める多くの人々にとりやや誘惑的な響きをも与えかねない言葉でもありますが、その実態はたいへん困難なものです。
 すでによく指摘されていますが、長期間の宇宙飛行を終えた飛行士たちが、地球生還後ただちには一人で歩行することが出来ず、しばらくリハビリ訓練を余儀なくされます。

 それはこの「寝たきり」状態をある角度から示唆しています。寝たままでは、筋力の極端な低下、老人であれば特に関節部位の硬直化(拘縮という専門用語で呼ばれている)、寝たままからくる床ずれの発生など多くの課題を抱えることになります。

 否、それよりも大きな問題は”もう寝たきりで生きていくしかない”という諦観から、”もう生きていてもしかたがない”と厭世に直結しかねないことです。もちろん現在の医学とて万能ではありません。ベットの上で生活せざるをえないケースも多くあります。その逆に、例えば適切な介護施設に入居出来ない方々が医療機関に緊急避難するケースでは、寝たきりが常態化し、そのまま生涯を終えざるをえないこともあると聞きます。在宅介護が声高に叫ばれる中、こうした不幸なケースを改善したい。自分でできることはなるべく自分で行い、人生をそれなりに全うするという生き方が何とか出来るようにしたい。

 それには、そのためのサービスを充実させることは勿論の事ですが、素人でもわかるノウハウ本というものがもっとあっても良いのではないでしょうか。本書はこうした背景から、リハビリエイド(バイオフィリア研究所)有限会社という、社会貢献に並々ならぬ努力を傾けている小さな会社に集まった熱心な専門家達の努力の成果となっています。

 NEDOの実施している福祉用具実用化開発費助成制度の成果が同社の開発している新四輪型ソリ付歩行器のみならず、本書のようなソフトな成果として日の目を見ることにより、福祉産業の育成ばかりでなくご関心の方々のお役に立つのであれば望外の喜びとするところです。本書は「床ずれの発生」を防ぎうる方策を提示し、「筋力の極端な低下、関節部位の硬直化」についても器具を利用したリハビリにより改善した事例を提示しています。

 本書が寝たきり問題に直面あるいは直面しようとしている方々にとって良き福音となるように願っています。そして、少しでも多くの方々が生き、動ける喜びを維持できるよう切望しています。 最後に、研究会の地道な努力が多くの方々の問題解決に役立つよう、また、NEDOとしても蔭ながらそのお手伝いを続けていきたいと考えています。