大会長挨拶

  

白澤卓二

東京都老人総合研究所分子老化研究グループ

 今年は東京でバイオフィリアリハビリテーション学会第8回大会を開催する運びとなりました。今回の大会長を務めさせていただきます老人総合研究所の白澤です。

 私は、医学部卒業後、呼吸器内科の臨床から始まり、最終的には基礎老化研究の分野で仕事をするようになってから13年が過ぎました。最近では介護や予防医学のフィールドの研究にも関係するようになり、このようにバイオフィリアリハビリテーション学会もお世話しています。基礎分野では、以前より、科学的根拠(エビデンス)を基盤に研究を展開してきたのですが、今後は臨床や介護、リハビリの分野でもエビデンスに基づいた治療法、予防法、介入などの考え方が必要になるかも知れないと感じています。

 その意味で、学際的なこの学会の中から、科学的根拠に基づいたリハビリのプロトコールが生まれてくるのではないかと期待しています。基礎医学の分野では、2001年にヒトゲノムが解読され、研究はゲノム研究からポストゲノムの時代に突入したといわれています。しかし、リハビリの現場では、多くの患者さんがゲノムの世界とはかけ離れた現実的問題に日々直面して、苦しんでいるのも事実です。今こそ、現場に応用できる科学的根拠を探索する時だと感じています。

 今回、この東京大会では、基礎医学分野から神経機能の改善に関する話題、そして、ゲノム科学、ポストゲノム科学に何が期待できるかという2つの話題を基調講演で計画しています。また介護老人保健施設のリハビリ臨床面からは、今後大きな課題になる痴呆判定の実際や、痴呆にならない方法、機能訓練による虚弱高齢者の日常生活機能向上や適切な器具の利用実際など、先達の経験に基づく得がたい2つの基調講演を計画しています。

 是非、活発で学際的な討論とこれからのリハビリテーションのあり方を語る大会にしたいと期待しています。