第22回大会
2018年11月10-11日

岡山市

国際学会特別顧問挨拶
第22回NPOバイオフィリアリハビリテーション学会によせて
 

     

岡山大学顧問・名誉教授
Special adviser, International Biophilia Rehabilitation Academy
森田 潔

私は、1974年に医学部を卒業し、それ以来40数年間の麻酔科医であります。この度の第22回バイオフィリアリハビリテーション学会会長である森田能子氏は、同級生であり、医学部卒業以来、リハビリテーション医で通しています。卒業当時、麻酔科もリハビリテーション科も、医学の主流から外れた、麻酔は外科の片手間、リハは整形外科の片手間的な存在で、卒業したての医師は普通、目指さない領域でありました。麻酔科は、救急蘇生、集中治療も扱う急性期医療の最たるものであり、リハは慢性期医療の最たるもので、この二つの医療は、全くの正反対の学問領域でもあります。私は何故、この不人気な麻酔科医を選び、能子氏はリハ医を選んだかは、定かではありませんが、少なくとも私は、どうしてこのような弱小科を選択したのかと悩んだ日もありました。若いころ、「先生は何科の先生ですか?」と聞かれ、麻酔科ですとは答えられず、外科のようなものですと、ごまかすのが常でありました。おそらく、リハ科も整形外科の一部ですとか答えていたのではと想像します。
麻酔科とリハ科は、医学領域としては、急性期と慢性期で、かけ離れていましたが、社会的な立ち位置は結構、似通ったところがあり、お互いに興味があり、お互いに励ましあうという間柄でもありました。両科とも、縁の下の力持ちで、目立たなくとも、非常に大切な医療領域であるという自負が常にありました。時代は変わり、近代医療が進歩していくにつれて、麻酔科もいつの間にか急性期医療の中心に、またリハ科も慢性期医療の重要な位置に座るようになり、何とも私たちは先験の明、また長年の努力が実ったという気持ちでもあります。
そのような経緯で、私は麻酔科医でありながら、正反対の領域であるリハビリテーション医学にも少なからず興味を持たせていただいてきました。その中で、バイオフィリアリハビリテーションという、革命的、既存の考えを否定しないまでも、全く違った発想でリハ医療の変革を目指している集団、学会の存在を知ることとなりました。学問的な評価をする力は私にはありませんが、その発想力、行動力、信念には驚嘆に値するものがありました。この国際学会にも二度参加させていただき、その活動を目のあたりにさせていただきました。2009年、キューバのバハマHermanos Ameijeiras Hospitalで開催された学会では、現地の厳しい社会環境下での医療体制の中、活発な意見交換がなされ、私も麻酔科医としての見地から講演をさせていただく機会もいただき、貴重なる経験をいたしました。また、昨年、2017年にはポーランド、クラコフから車で数時間、チェコとの国境近くにある、私から見れば理想的なリハビリセンターでの討論、また、その後、訪れたバルト三国のラトビアの首都リガで、洗練された伝統のあるヨーロッパのリハビリ施設を垣間見せていただきました。それぞれの国でのバイオフィリアリハビリテーションの存在感の大きさと活発なる交流活動は、私にとりましても、かけがえのない経験をさせていただきました。
この学会が、さらに発展し、リハビリテーション医学イノベーションの起爆剤となることを期待してやみません。